コーマック・マッカーシー

コーマック・マッカーシーが死んだ。死んだ有名人に対して何か取ってつけたようなたわごとを述べるのは私は好きではないし、マッカーシー本人もおそらくは自分の死について何かを述べられようとも思っているまい。舞台には一匹の熊が躍るだけの空間しかなく、彼もまた踊り疲れて死に寝首をかかれた熊だ。

ただ、彼は私の読んでいた数少ない存命作家のひとりだった。これは(もちろん虚偽のものなのだが)日記なのだから、自分の心に浮かぶことを少しだけ書いておこう。

海岸になった友人

知人が海岸になった。しばらく前の話だ。一年くらい前だった気がするが、はっきりとは覚えていない。何の花が咲いていたのかも思い出せないくらいだ。大学院生の時間軸というのは多かれ少なかれ混濁している。

モルディオ家のリタ

久しぶりにブログを更新する。明日もするだろう。

文章をまた書き始めている。ネットで私ではない誰かが、一度やめた小説をもう一度書き始めていた。この停止と再開は何度も繰り返されてきたと注意した後で、彼女は、「自分のいる場所に錨を沈めるように小説を書くのをやめていた」と言っていた。これはなかなかいい言葉だったから、ここで改めて書いておく(そしてリチャード・ドーキンスの顔を思い出す)。

お前らは分かってない。村上春樹『街とその不確かな壁』はこう読むんだ。尻の穴かっぽじってよく聞け【書評】

初めに

村上春樹の『街とその不確かな壁』(以降、『街と』)が出た。もちろん読んだ。小説の内容については次のページに詳しく書かれている。私はこのあらすじ以上によいものをかける気はしない。だから、あらすじを求めてこのブログ記事を読むのは間違えた考えだ。

四月は最も冷酷な月

四月は最も冷酷な月、芽吹く

ライラックが死んだ土地から、混ざり合う

記憶と欲望が

(エリオット 『荒地』)

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